プログラムHムラグロプ

by 大倉玩伍 (OHKURA GYANGO)

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[FLLR-0002]

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released May 23, 2014

OHKURA GYANGO Presents

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filler Japan

ホシナトオルがでっち上げたレーベル。2014年3月8日自宅にて始動。

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Track Name: センス・オブ・ワンダー
開かれた耳で夜の海岸を歩けば
それが時間を噛み砕く音とわかるような
思わぬところから欲しいものが見つかる
そんなラッキーだけを魔法と呼びたい

沈黙と孤独が住むこの町には
古い弾丸が壁中に残っていて
耳を当てると今でも囁きあっている
勇敢なミツバチが残した針みたいな言葉が

ある日、階段を踏み外す夢で目覚めると
ぼくの右足には確かに何かを蹴った感触が残っていた
忘れないうちに、と外へ飛び出たら
舞いあがる風とひとつになれた気がしたんだ

らみぱ らみぱ 足音はもうどこかへ
センス・オブ・ワンダー
センス・オブ・ワンダー

いつかは体が理想に追いつかなくなって
歴史の中で眠る準備をはじめる
全身の骨が鉱石のベッドを懐かしがるんだ
だけど、ぼくにはまだまだ、駆け回る元気がある

おぼえておくよ
本当のやさしさは、かなしみを百周半してから、やっと届くものだって
ほら、見送る誰かの手が虹に変った
指先からもれた心のインクで

らみぱ らみぱ 足音はもうどこかへ
センス・オブ・ワンダー
センス・オブ・ワンダー
Track Name: 放熱兵団
ぎっしり詰まった細胞の摩擦が
指令となって体内を巡る
我々の意識は恍惚の只中で
最良の選択を求めんと欲す
怒りという感情から混乱を
善悪の盤面からすべての駒を
排除し生まれ変わった我々
もっとも無垢な魂の末裔

攻撃 攻撃 攻撃 攻撃 
 激昂 激昂 激昂  
  攻撃 攻撃 攻撃 攻撃 
激昂 激昂 激昂 

溶鉱炉から手の鳴る方へ
頭を残し 体を切り捨て
溶鉱炉から手の鳴る方へ
両側に引っかかった正義の上を歩く

攻撃 攻撃 攻撃 攻撃 
 激昂 激昂 激昂  
  攻撃 攻撃 攻撃 攻撃 
激昂 激昂 激昂  

いくたびも新たな世紀のはじまりを 新たな火が告げた
功罪を問う暇もなく我々は突き進んだ
何度も言い交わされてきたように
我々こそが互いに打ち消しあえばいいのかもしれないが
もうここには誰も残っていない
これより本部隊は拡散し さらなる敵を求め縮小する
万物のあり方を変える戦争の時代だ
最後の敵地を蹂躙し勝利をおさめたとき
果たして凱歌を響かせるだけの空気が残っているだろうか
Track Name: 採集された法螺話
なんでも、この土地には大きなトカゲが住んでいたそうです。
 長い尾っぽと鋭い牙が自慢で、この世界は自分のものだと信じていました。
 見た目はたしかに怖ろしい怪獣でしたが、頭の方はというと、かなり足りなかったと思われます。
こんな逸話が残っていました。
 トカゲは尖った牙で自分の尾っぽを噛んでしまい、抜けなくなりました。
 どうにかしようともがいているうちに、トカゲはぐるぐると回りはじめ、止れなくなりました。
ぐるぐるぐるぐる。ものすごいスピードで回り続けました。
 その力があまりにもすさまじいので、トカゲは天に達するほどの竜巻となり、そのまま何週間も何ヶ月も経過したと言われております。
 中に取り残された人々はどうなったのでしょうか?
 大きな建物はどこへいってしまったのか?
 嘘か本当かわかりませんが、文明という文明は残らず空へ舞い上げられ、逆さになってしまったと伝えられております。
 生き物は、といいますと、じっとり結露のように地面に張り付き、次第に姿かたちも消え、ひとつの池になってしまいました。
 やがてトカゲも力尽き、竜巻が消えると、空からはガラクタの雫がポタリポタリと落ちはじめました。
 今、残っている巨大な塔のかたちをした遺跡は、それが長い年月をかけて固まったものだと土地の人たちは信じています。
 トカゲが駆け回った跡も、きれいな円のかたちで残っていますが、残念ながら命の池は涸れてしまったらしく、お土産やさんに並んでいるのは、ただの井戸水だそうです。
Track Name: 砂塵
わたしが十数年ぶりに さくら団地を訪れたのは
あっち側へいったきり戻れなくなった かつての友人から
短い手紙をもらったから
故郷は 地盤沈下を起こしたみたいに低く
まるで模型の中へ入り込んでしまった気分
加えて ひとっこひとり歩いていない この有様はどういうことだろう
遠くでちいさな影が揺れている
わたしは薄ら寒い想いを振り切るように駆けてみた

待っていたのは車椅子に乗った老人
「案内しよう」とわたしに運転を任せ
ある方の足で 地面を引っ掻くような仕草をし
時折 呪文のような言葉を呟き 誰かに似た顔で笑った 

あの友人だった

「公園へいけ」と彼は命令した
結晶体のようなジャングルジム 
芝生の上には忘れ物のサッカーボール
戯れに蹴飛ばしたら 透明な壁に跳ね返り 戻ってきた
振り向いたが 老人の姿はない

壁は万力となって迫ってくる
なすすべもなく天を扇ぐと
太陽の変りにいたのは こちらを覗き込む巨大な老人の顔
圧縮された風に目をやられ はいつくばる
てんじょう一杯に響く 友人の声をわたしは聞いた

「全ての砂は、雨の次に血の味を知っている」

爪の間やキーボードの隙間に
誰かわたしを見つけてくれないか?
Track Name: プラトビッチの花
きみはラズベリー 恋はタンジェリン 実るまでがもう素敵だよ
枯らさないでプラトビッチの花は

「前世はザリガニ」と豪語するきみに連れられ、喫茶店の隅っこの席にふたり
言っとくけど、これはかなりの僥倖
このこ、学校じゃ男子とは、喋らないどころか目もあわせない
同僚に見られたら、明日の放課後あたり、ぼくは断頭台の露になる
そしたら華々しい教師生活もおしまいだ(アデュー)
だけど、ちょっと待て、さっきから様子がおかしい、きみはこなれた手つきで空中をなでたり、何かつかんでは、ひねるような仕草をしている
しかも超真顔(いいじゃん)
ウェイターさんゴメンなさい、おしぼりとってって意味じゃないんです!
このこは何か企んでるだけなんです、それも絶対よからぬこと!

きみはラズベリー いつも甘い言葉だけ求めているけど
口の中じゃ紫色の飛沫が満ちてるよ
ママの言いつけより速やかに 隠れる場所を見つけだしたら
ほころぶのかい? プラトビッチの花は

「さっきから何してるの? 天使さまをつかまえてるんだ、偉いね。だ、駄目です!放して放して。果汁百パーセントって、そういう問題じゃないから!」
「色やかたちより風味が大切」って
差し出されたカップの中は、なるほど濁ってる
こいつを飲み干せとおっしゃるわけですが…ええと、大丈夫すか? 

恋はタンジェリン どこかポエティック 異なる顔 メビウスの○
唇からだいだい色の何かが垂れてるよ?
「やさしくないひとはきらい」 パラドックスの味をしめたら
枯らさないでプラトビッチの花は
Track Name: 宇和縞桔梗にはじめて会った日
「ここだ、早くきたまえ。君の足はカニクリームコロッケでできているのかい?」
 一部屋しか住人のいないマンションへ案内されてから、七分が経過していた。
 エレベーターは故障中、というより、まだ完成していないため不通だった。
 十二階へいくには、階段を使うより他はなく、はじめは妻のように三歩遅れてのぼっていた俺も、十階を越えてからは大きく差をつけられていた。
「はあい」
 かろうじて返答。
 制服の中は熱帯雨林の空気で充満している。シャツに汗がつかないよう、腹をへこませてみたが無駄な努力だった。
 俺の到着を確認した奥田部先輩がノブへ手を伸ばした、そのとき。
「あ、百斗様。失礼しました」と、ひとりの女が出てきた。
 話には聞いていたので、すぐに家政婦だとわかった。
両手で大きな洗面器を抱え、肩で扉を開ける格好をしている。
「どうぞ」
 先輩はドアを支え、やさしく声をかけた。彼女は大げさすぎるほど恐縮した姿勢のまま、俺たちの傍らを通り過ぎていった。
 それとも、あれは洗面器の中身が見えないよう、わざと背を曲げていたのだろうか。
 未練がましそうに目で追っていると。
「海水だよ」
 先輩が教えてくれた。
「桔梗がまた吐いたらしい」
「吐いたって、海水を? どこから?」
「口からさ。時々あいつの喉は、どこかの海とつながってしまうんだ」
 それを聞くなり、俺の口は古井戸のように言葉を失った。
「急ごう。僕たちの足音には気づいているはずだ」
 先輩に促され、廊下を歩く。
 奥からは正真正銘、磯の香りが漂っていた。窓の外は高層ビルが立ち並ぶ大都会だというのに、けったいな話だ。
 どうやら呪いというものは本当に存在するらしい。
 そして、そいつを解くということは、海水を真水へ戻すくらい途方もなく、また自然に背いた行為なのだろう。きっと。
「さあ、急いで。頭がナシゴレンになったのかい?」
「今いきます」
 こうして俺は奥田部先輩の従妹であり、写真部の部長でもある宇和縞桔梗と対面した。
 彼女は緞帳のように重いカーテンを背景に、真っ赤なレザーのソファーへ腰かけていた。
 いや、正確には辛うじて引っかかっていたと言うべきか。
 バルテュスの描いた少女みたいに両足をひろげ、超人的なバランス感覚で全身の体重を支えながら、タヌキ寝入りをしている。
 奥田部先輩はお土産のドーナツを鼻先へつきつけ、こう言った。
「お客さんを連れてきたよ。前に話した山羊くん。新入部員の」
 過酷な呪いを背負いし乙女は薄目を開け、立ちあがった。
 青白い裸足には血管が浮いている。華奢な体で大きく息を吸いながら、よろよろ歩く。
(まるでゾンビだな…)
 失礼を承知でそんな印象を持ってしまった。
 すると彼女は一足飛びに俺のうしろへ回り、平手で思いっきり背中をたたいた。
 平穏な毎日が崩れ落ちる音が聞こえた。
 先輩が言う。
「ごらんのとおり、未発症だけど彼も呪い持ちさ。仲間に入れるには申し分ないだろ?」
 宇和縞桔梗は無言で大きくうなずいた。
 それから黄緑色の眼球でこちらの顔を覗き込み、にっこり笑うと、俺の歯並びを崩壊させる勢いでドーナツを押し込んできた。かための杯にしては、ちと乱暴だ。
 俺は、今胸をしめつけている感情がいかなる類のものなのか、パサパサのオールドファッションを食べ終わるまでに答えを出そうと決めたが無理だった。
 全てを見透かすようなタイミングで手を差し出し、彼女は俺から考える力を奪ったのだ。
「よっ、後輩。遊びにきてくれて嬉しいじぇ」


つづく